Japanese Tea: A Comprehensive Guide(日本茶:総合ガイド)第2版

私たちの代表である鈴木シモナが、2025年10月に著書『Japanese Tea: A Comprehensive Guide』の第2版を刊行しましたので、お知らせいたします。 2017年11月に出版された第1版は、日本茶の理解に完全に特化した初めての英語の書籍でした。あれから8年、ついに全面改訂・大幅増補された第2版が登場です! 全ての章が丁寧に見直され、ページ数も97ページから175ページへとほぼ倍増しました。シモナ自身の日本茶に関する経験に加え、茶業界や関連分野の専門家からの知見をもとに、日本茶についてさらに深く掘り下げています。茶の栽培や製造工程、様々な日本茶の種類や淹れ方、産地、歴史、文化など、多岐にわたる内容が網羅されています。 第1版に収録されていた豊富な情報に加え、第2版では茶品種の説明や、緑茶以外の日本茶の製造についての新たな内容が追加されました。また、日本の主要な茶産地についても、より深い考察が盛り込まれています。さらに、あまり知られていない日本茶の種類やその香りの特徴を紹介し、ティーペアリングや料理への応用など、「飲む」以外の日本茶の楽しみ方も提案しています。 全体として、この新版は、茶の専門家にも愛好家にも役立つ総合的で奥行きのあるガイドとなっています。日本茶を学び始めたばかりの方にも、既に知識を持つ方にも、日本茶の世界を「畑から湯呑みまで」より深く理解していただけるよう作られています。 『Japanese Tea: A Comprehensive Guide』第2版は、世界各国のAmazonで購入できます。

秋の夜長に、月を愛でる──「お月見」の楽しみ方

日本には、秋の澄んだ夜空に浮かぶ満月を愛でる「お月見」という風習があります。特に「中秋の名月」と呼ばれる満月は、美しい月を眺めながら、自然の恵みに感謝を捧げる特別な夜とされてきました。 旧暦の8月15日にあたる「十五夜」がその代表で、2025年は10月6日が十五夜にあたります。現代では新暦に合わせて、9月中旬から10月初旬のどこかでお月見を行うのが一般的です。 月に感謝し、秋の実りを喜ぶ お月見には、いくつかの意味があります。 まず、月そのものへの感謝。昔の人々にとって、月明かりは日常生活に欠かせないものであり、時間や天気の目安でもありました。月を敬い、自然の摂理に感謝する心がこの風習の原点です。 次に、豊かな収穫への感謝と、来年の実りへの祈り。稲をはじめとする作物の収穫期にあたるこの時期は、収穫祭としての意味合いも色濃く残っています。 そして最後に、純粋に月の美しさを楽しむということ。古来より、日本人は月の光に心を寄せ、多くの和歌や物語にその情景を詠み込んできました。 中国から伝わり、平安貴族の「月見の宴」へ お月見の起源は、中国・唐の時代にさかのぼります。日本には平安時代に伝わり、貴族たちの間で月を愛でる「月見の宴」が盛んに行われました。 音楽を奏で、和歌を詠み、酒を酌み交わす──その優雅な風習は『源氏物語』などの古典文学にも描かれています。 時代が下るにつれ、月見の風習は庶民にも広がり、江戸時代には舟の上から月を眺める「船遊び月見」なども楽しまれるようになりました。風流と自然を愛する日本人らしい文化が、今なお各地に息づいています。 京都では、寺院での月見茶会も 京都では現在も、お月見の伝統を大切に守っています。秋になると、寺院などで「観月会」や「月見茶会」が開かれ、月とともにお茶や雅楽を楽しむことができます。静かな庭園とともに、月を眺めながらお抹茶をいただく時間は、まさに日本文化の粋といえるでしょう。 月見団子と「芋名月」 お月見といえば、やはり欠かせないのが「月見団子」です。丸くて白い団子を三方に盛り、ススキを添えて月に供える光景は、秋の風物詩のひとつですね。 実はこの団子にも地域差があります。東日本ではシンプルな丸い団子が主流ですが、関西では小芋の形をした団子にあんこを包んだものも見られます。これはかつて、団子ではなく里芋を供える風習があったことに由来し、「芋名月(いもめいげつ)」という別名にもつながっています。 月のうさぎとススキの意味 お月見にまつわるもう一つの可愛らしい要素が、「月のうさぎ」です。日本では、満月の模様がうさぎが餅をついている姿に見えるとされ、月見団子やススキと一緒に飾られることが多いですね。 ススキは、収穫前の稲穂の代わりに供えられるもので、豊作や子孫繁栄を祈る意味も込められています。神様の依り代としての役割もある、自然への敬意を表す大切な存在です。 自宅でも楽しめる「お月見」のすすめ 今年の十五夜には、ぜひ自宅でもお月見を楽しんでみてはいかがでしょうか。 お気に入りのお茶を淹れ、手作りの月見団子を並べて、静かな夜にゆっくりと月を眺める。それだけで、いつもの日常が少しだけ贅沢な時間に変わるはずです。 […]

日本茶マスターコース 2025年9月

今年の9月、私たちは今年2回目となる「Japanese Tea Master Course(日本茶マスターコース)」を開催することができ、大変嬉しく思います。 今回のコースには、4大陸から多様な学生たちが参加し、特に中南米からの参加が非常に活発でした。コース期間中は、日本語と英語はもちろん、フランス語やスペイン語など、さまざまな言語が飛び交い、活気あふれる会話が交わされました。 学生たちはどの活動にも高い熱意を示し、残暑にも負けず積極的に取り組みました。参加者は、複数の手法による手摘み・手揉みの製茶体験を行いました。さらに複数の製茶工場を訪問し、日本の茶業界の専門家たちと交流しながら、現代の茶産業が直面する課題と可能性について学びました。 コースの締めくくりには、修了式とクロージングパーティーが開催され、講師、学生、そしてそのご家族が集い、共にお祝いしました。 今年の2回のマスターコースが無事終了した今、私たちはすでに2026年に向けて準備を進めています。来年も多くの皆さまにお会いできることを心より楽しみにしています!

日本茶カンファレンス in 東京 2025

2025年の日本茶カンファレンスは、この取り組みが始まって3年目を迎えました。7月19日に東京で開催された今回のカンファレンスでは、日本各地で生まれる革新的なお茶のプロジェクト、国際的な日本茶コミュニティからのグローバルな視点、そして登壇者と参加者をつなぐ活気ある茶会という3つのテーマを中心に、多彩なプログラムが展開されました。 カンファレンスの中心となったのは3人の日本茶イノベーターによる発表でした。日本お茶割り協会の多治見智高さんは、お茶とお酒をブレンドして独自のカクテルを生み出す「お茶割り」のコンセプトを紹介しました。龍名館の濱田裕章さんはお茶をテーマにホテル業界におけるホスピタリティ体験を豊かにする可能性を探りました。Yunomi.lifeのIan Chunは、日本茶の輸出と、かつてない世界的な抹茶ブームについて語りました。 講演の後には、参加者と登壇者が直接交流できるリラックスした茶会が開かれ、厳選されたお茶を楽しむ時間となりました。発表者のブースに加え、日本茶エヴァンジェリストプログラムの学生たちも3つのブースを設け、来場者と積極的に交流しました。 続いてプログラムは国際的な視点に移りました。La Finestra sul TeのNicoletta Tulさんは、イタリアでの活動や日本茶に関する最新の動きを紹介しました。また、Chang Hyunheeさんは、韓国で日本茶がどのように受け入れられているかを語り、現地での普及活動を説明しました。さらに、日本茶エヴァンジェリストプログラムの学生たちも登壇し、2024年度卒業生3人がカナダ、アメリカ、中国での留学中に行ったお茶の活動を振り返りました。また、2025年度在籍の学生たちは、この秋に訪れる予定の国々を紹介しました。 東京でのカンファレンスは、新たな出会いとお茶の発見、そして未来への可能性を祝う活気ある場となりました。ご参加くださった皆さまに深く感謝申し上げるとともに、来年の日本茶カンファレンスで再び集えることを楽しみにしています。

京の七夕の楽しみ方

七夕といえば、笹に短冊を飾る風景を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。 神社や商店街はもちろん、学校や地域の施設など、身近な場所でも七夕の飾りつけを見ることができます。 多くの小学校では、子どもたちが思い思いの願いごとを短冊に書き、星をテーマにした工作を作ったりと、楽しい行事のひとつになっています。 給食にも「七夕ゼリー」など、星形のカラフルなデザートが登場し、季節感をたっぷり感じられる工夫がいっぱいです。 七夕は7月だけじゃない? 一般的に七夕は7月7日に祝われますが、京都や一部の地域では、旧暦にあたる8月にも七夕行事が行われます。 実は私も、九州にいた頃はそんな風習があることをまったく知りませんでした。京都に住むようになってから、夏の間に2回も七夕を楽しめることを知り、ちょっと得した気分になったのを覚えています。 美しすぎる「七夕スイーツ」 京都の七夕を語るうえで欠かせないのが、季節限定の和菓子たち。 中でも「七夕羊羹(たなばたようかん)」は、見た目も味も格別です。天の川をイメージした美しい層や、星形のモチーフをあしらった羊羹は、目にも涼やかで、まさに食べる芸術品のよう。 7月と8月の七夕シーズンには、京都各地で茶会や茶道のお席が開かれ、こうした七夕限定の和菓子が抹茶とともに振る舞われます。 星に願いを、心にひとやすみを もし7月や8月に京都を訪れることがあれば、ぜひ七夕ならではの和菓子や、趣のある茶会をのぞいてみてください。 美しく丁寧に作られた季節の味わいとともに、静かに喫する時間は、忙しい日常にそっと彩りを添えてくれるはずです。 …そういえば、織姫と彦星も、愛と仕事のバランスを取るのに苦労していたようです。 あなたも、仕事や育児に少し頑張りすぎていませんか? 自分時間はとれていますか? 今だけのお菓子を口実に、たまにはお茶と甘味で、心にちょっとした「七夕の休憩時間」をつくってみてはいかがでしょう。  

「水無月(みなづき)」に込められた京都の夏の味わい

「水無月(みなづき)」という言葉は6月の月名ですが、梅雨の真っ只中なのになぜ「水の無い月」というのか、考えたことはありますか? これは、古語の文法に由来しています。「無」は否定ではなく、「の」にあたる助詞として使われていたため、「水無月」は本来「水の月」という意味なんです。 とはいえ、雨が多い季節に「水が無い月」と書かれているのは、少し不思議に感じますよね。 京都で「水無月」と言えば、もうひとつ特別な意味があります。 京都で育った方にとっては、6月になると自然と頭に浮かぶ、ある和菓子の名前でもあるんです。とくに、6月30日に欠かせない甘味として親しまれています。 私は九州出身で、京都に来るまでこの「水無月」というお菓子の存在を知りませんでした。 でも、こちらではすっかり初夏の風物詩。ういろう生地を三角形に切り、上に甘く煮た小豆をのせた、涼しげでやさしい味わいの和菓子です。もっちりした食感と透明感のある見た目が、蒸し暑い季節にぴったりなんですよ。 実はこのお菓子、もともとは「氷」の代わりとして作られたものだそうです。 昔は「氷室(ひむろ)」という貯蔵庫に冬の間にできた氷を保存し、6月30日に宮中へ献上する「氷の節句」という行事がありました。ただし、冷蔵庫などがなかった時代、庶民が氷を口にするのはなかなか難しいこと。 そこで氷のかけらを模したこの和菓子が生まれたのです。三角形は氷片を、小豆は厄除けの力があるとされ、無病息災を願う意味が込められています。 また、同じ6月30日には「夏越の祓(なごしのはらえ)」という神道の行事も各地の神社で行われます。 茅(ちがや)で作られた大きな輪を、和歌を唱えながら左回り、右回り、左回りと八の字を書くように3度くぐります。半年分の穢れを祓い、残りの半年の健康と幸せを祈る儀式です。この日に水無月をいただくことで、さらに厄を落とし、元気に夏を乗り切れると信じられています。 京都の和菓子店では、水無月を6月30日だけ限定で販売するところもあり、当日は朝から行列ができることも。 毎年「どのお店の水無月にしようかな」と楽しみにしている方も多いんです。 茶道のお席でも、6月にはこの水無月がよく登場します。ほんのり甘く、さっぱりとした口当たりが、点てたばかりの抹茶によく合います。 もし6月に京都を訪れる機会があれば、ぜひ「水無月」を探してみてください。静かにお茶とともに味わいながら、日本の夏の美しい伝統を感じてみてはいかがでしょうか。

日本茶カンファレンス in Kyoto 2025

2025年で3回目となる日本茶カンファレンスが7月26日に京都で開催されました。今年のプログラムは従来以上に充実し、日本における革新的なお茶のプロジェクトの紹介、世界の日本茶事情の概観、そしてプレゼンターと参加者の繋がりを深めるティーパーティという3つのパートで構成されました。 イベントは歓迎の挨拶で幕を開け、3人の日本茶イノベーターがプレゼンテーションを行いました。 辻せりか氏(AOBEAT)は、美しい茶席でお茶を楽しんでもらうための、屋外茶室「茶の間」づくりに取り組んでいることを紹介しました。静岡大学准教授の一家崇志氏は、新しいお茶の品種を開発するのに必要な時間を大幅に短縮することができる、お茶のDNAの研究について紹介しました。 最後に、宮崎県の茶農家で緑碧茶園の社長である興梠洋一氏が、北海道でのお茶栽培によって、その北限を押し広げるという先駆的な取り組みについて語りました。 これらの感動的な講演に続き、参加者が厳選された日本茶を楽しみながら、プレゼンターと直接会話する機会 を得られるティーパーティが開催されました。プレゼンターブースに加え、日本茶エバンジェリストプログラムに参加する日本の大学生が3つのブースを運営し、ゲストとの交流を行いました。 お茶会でリフレッシュした後には焦点が国際的なステージに移り、北米、ヨーロッパ、中東で活動する3人のティーカタリストによるプレゼンテーションが行われました。Ikigai-shuのViktoryia Toma氏は、UAEでの日本茶の普及活動と、そこで観測された関心の高まりについて共有しました。 Teakan社のJanice Chan氏はオンラインでカンファレンスに参加し、カナダでの抹茶とほうじ茶のトレンドの急上昇を強調しました。ベルギーのティーサークルからはオンラインでCinzia Merlin氏も参加し、現地での日本茶教育プログラムがいかに関心を高めているか説明しました。 イベントは、日本エバンジェリストプログラムに参加する大学生による発表で続きました。2024年度派遣生の3名が、イタリア、フランス、中国での留学プログラム中の日本茶活動について報告しました。その後、2025年度生の11名が、今秋訪問する予定の地を紹介しました。特に注目すべきは、過去のエバンジェリストの活動が、学生主導の日本茶サークル「Socie-tea」の設立につながったことで、カンファレンス参加者は過去1年間の彼らの活動について知ることができました。 このイベントは、日本茶を軸に、アイデアや物語、新たな繋がりが活発に交わされる場となりました。皆様の熱意に深く感謝し、来年の日本茶カンファレンスでまた皆様をお迎えできることを楽しみにしています。

日本茶マスターコース 2025年6月

2025年6月に日本茶マスターコースが再び開催されました。今回は、アメリカ、イタリア、オランダ、ポーランド、リトアニア、韓国、シンガポール、日本の8か国から12人の生とが集まり参加しました。   10日間にわたり、生徒たちは日本茶にどっぷりつかり、茶産業や茶の科学を教室で勉強したり、また近隣の町の様々な茶の関連施設を訪れました。このコースでは、伝統的な収穫方法や製造方法と近代的な技術の両方を経験する機会がありました。時折雨が降りましたが、意欲をそがれることなく、生徒たちは茶摘みを熱心に楽しみました。   生徒たちはまた、抹茶をつかった茶道だけでなく、あまり知られていない煎茶道の両方を経験することで日本茶の文化の深みに触れました。伝統的な陶器の町や茶筅で知られる町にも訪れました。   プログラムを通して、18人の講師が専門知識と熱意を惜しみなく共有しました。すでに日本に住んでいる生徒を含め、すべての生徒が、普段なかなか見ることのできない舞台裏の貴重な経験ができたことに感謝し、このコースに参加できたことを喜んでくださいました。今回得られた深い知識と理解が、今後どのように花開いていくのかが楽しみです。