《茶✕情報発信》日本茶の案内人。「日本茶生活」がガイドする十人十色の感動体験。「お茶のある生活」をもっと楽しく。【日本茶生活/三浦一崇】

近年、お茶に関するメディアが増え、英語での日本茶に関する情報発信も格段に増えた。 そういったメディアで発信される情報は、大まかに3つに分けられる。お茶に関する知識の情報、イベント結果報告などの過去の情報、そして開催予定のイベント予告である未来の情報だ。 知識情報、過去情報は、これまでも様々なメディアで蓄積されているが、未来情報は、各産地や主催者ごとに断片化されており、一般の人が適切な情報へ行き着くのは至難の業である。 今回ご紹介するWebメディア「日本茶生活」は、過去情報はもちろん、未来情報についても全国の最新情報を発信しているポータルサイトだ。また日本語と英語の2か国語で、日本茶についてきめ細やかな情報発信をしているのも特徴の一つである。 「日本茶生活」では、日本茶や日本茶の文化や知識に関すること、全国の茶産地・日本茶カフェの紹介にとどまらず、海外の日本茶カフェも紹介されている。また、これから開催される全国の日本茶関連のイベント情報も随時発信されている。さらには日本茶文化の普及と楽しみを広めるためにWEBメディアでの情報発信だけにとどまらず、日本茶のリアルイベントも主催している。 そんな国内外で変化・発展を遂げている日本茶の魅力を様々なカタチで発信する、日本茶生活合同会社(以下、[日本茶生活]) 代表 三浦一崇さんに話をうかがった。 三浦一崇(みうら かずたか) 静岡の茶農家の生まれ。出版社やPR会社に勤務し、長年メディア関連の仕事に従事。ある時期にいくつもの縁や偶然が重なってお茶の虜になり、日本茶の世界へ。製茶問屋での勤務を経て、2021年に独立し、「日本茶生活」の事業をスタート。日本茶専門店やカフェ情報を発信する日本茶ウェブメディア「日本茶生活」と英語版サイト「JAPAN TEA GUIDE」を運営。また、日本各地の生産者や事業者と連携し、様々な日本茶イベントをプロデュースしている。 目次1 消費者や読者、みんなが好きに楽しめる日本茶ガイドが作りたい!2 企画したお茶のイベントが楽しすぎて、のめり込んでしまったという話。3 自由な発想を大切に。今あるものをさらに良くするためのナビゲートをする[日本茶生活]4 日本茶ほど取り組んでいて苦しくて、でもロマンを感じるものって、ないですよね。 消費者や読者、みんなが好きに楽しめる日本茶ガイドが作りたい! Q:日本茶生活合同会社について簡単に教えてください。 三浦:「日本茶の感動体験を世界中に」をコンセプトに、日本茶の淹れ手・伝え手として日本茶ウェブメディア「日本茶生活」の運営や、日本茶イベントの企画運営、日本茶ケータリングサービスなどを展開しています。 Q:「日本茶生活」とはどのようなウェブメディアですか? […]

《茶✕集まり》消費者はお茶を飲むためだけに存在するのか?消費者にとって「ほどよい敷居の低さ」を消費者として実践し続ける【日本茶アンバサダー協会/満木葉子】

お茶の消費が減っている。 これは生産者や販売者など、お茶に関わる者にとっては緊喫の課題である。しかしこの課題を結局、解決してくれるのは消費者だ。 2015年に設立された一般社団法人 日本茶アンバサダー協会は、お茶のファン(消費者)が自分のできることを通じて、お茶に関わる人たちを底支えすることを目的に創られた協会だ。 ゆるやかなネットワークで、「敷居の低さ」「ほどよい値段」といった裾野を広げるためのキーワードを大切にしながら、活動を続けている。その活動は、松屋銀座での「番茶フェスティバル」やその屋上でお茶を育てる「銀座のお茶プロジェクト」など、一般の消費者の枠を大きく超えた活動も展開している。 日本茶アンバサダー協会ほど目に見える形で活動しているお茶のファン(消費者)の集まりはなかなか見当たらないが、こういった活動をしているグループは、茶飲み友達にはじまり、有形無形で存在している。 お茶に関わる者にとって、このような集まりとのコラボレーションはお茶の消費拡大に直結すること間違いない。 どのような人たちが、どのようなきっかけで、「行動する消費者」となってくれるのだろうか? お茶のファンを増やし、育てつづける日本茶アンバサダー協会代表理事の満木葉子さんにお話をうかがった。 満木葉子(みつき ようこ) 株式会社ねこぱんち代表取締役 一般社団法人日本茶アンバサダー協会 代表理事神戸生まれ、鹿児島育ち。立教大学を卒業後、数社を経て2011年に株式会社ねこぱんちを設立。商品開発や販売促進のサポートを通して“まだ”力を発揮できていないヒト・モノ・コトを応援。キモチをカタチに!2015年に一般社団法人日本茶アンバサダー協会を設立。日本茶アンバサダーの募集・育成、産地や企業・自治体との協働事業創出、イベントやセミナー、講演、執筆を通じて日本茶のファンづくりを行い、生産者と産地のエンパワーメントに取り組む。 目次1 良い消費者を増やす。日本一敷居の低い日本茶フェスティバルを運営する日本茶アンバサダー協会2 日本茶アンバサダー協会設立のきっかけは農家さんの「ねこちゃんなんかやってよ!」だった3 少しでもお茶づくりを身近に。大都会の屋上でお茶をつくる「銀座のお茶プロジェクト」4 目指すは1億総日本茶アンバサダー。“佳いお茶”を未来に繋ぐために日本茶アンバサダー協会としてできることを 良い消費者を増やす。日本一敷居の低い日本茶フェスティバルを運営する日本茶アンバサダー協会 Q:日本茶アンバサダー協会(以下、協会)はどのような協会ですか。 満木:緩やかな協会でしょうか。特に年会費などをいただいてるわけでも活動を強制するようなこともなく、気持ちとかタイミングが合えばいっしょにやりましょうという、会員と会員が有機的に繋がっている協会ですね。 番茶フェスティバルを運営した日本茶アンバサダーと出展者のみなさん“この指とまれ”で、興味のある人に活動に参加していただくという形にしています。私としては一人でも多くの日本茶アンバサダーが日本茶の普及活動に関わることのできる機会をもっとつくっていきたいと思っています。 […]

《茶✕学び》茶産地から伝えるお茶の魅力。単発で終わらないお茶セミナーでふえる産地の応援団 【八女茶ソムリエスクール/竹中昌子】

日本茶インストラクター制度が始まって20年以上が経過し、各茶産地でもさまざまなセミナーやワークショップが茶摘み時期に限らず、開催されている。 最近では、各茶産地でも「知覧茶アドバイザー養成講座」、「宇治茶アカデミー」、「さやまちゃ塾」といった連続講座も行われるようになってきた。その背景には、「もっとお茶について知りたい」という、お茶が好きな消費者ニーズの高まりがうかがえる。 そういったトレンドのなかで八女茶ソムリエスクールは、「『八女茶』を美味しく楽しく淹れることができる人材を育成する」ために2022年に開講した。 八女茶ソムリエスクールの興味深い点としては、4つのコース(コンシェルジュ、ジュニアソムリエ、ソムリエ、マスターソムリエ)を育成していく意欲的な点である。「ペットボトルのお茶が基本」となった今、「淹れ方」や「その背景にある魅力」を知ることで変わるお茶の味わいをどのように伝えていくかという点は、お茶の可能性を広げるために欠かせない重要なテーマである。 今回、お茶の魅力を「学び、体験する」分野で活躍される、八女茶ソムリエスクール専任講師、竹中昌子さんにお話を伺った。 竹中昌子(たけなか しょうこ) 【TEA FOREST JAPANESE】代表福岡市内の和菓子店にて和菓子職人として勤務時、日本茶を学びはじめ、和菓子店を退職とともに【TEA FOREST JAPANESE】日本茶のイベント会社事業をスタート。NPO 法人日本茶普及協会茶育指導士。一般社団法人日本フードライセンス国際協会和菓子コーディネーターの資格も有し、八女伝統本玉露ブランディングスタッフや NPO 法人日本茶インストラクター協会の福岡県支部理事を兼任。 目次1 八女茶ソムリエスクールの立ち上げ。「八女茶の今を楽しむ」イベントがきっかけに2 必ず現地に行く。作り手が淹れてくれるお茶の味を覚えてから広めたい3 「学び」の視点から、日本茶の未来を考える 八女茶ソムリエスクールの立ち上げ。「八女茶の今を楽しむ」イベントがきっかけに Q:八女茶ソムリエスクールについて教えてください。 竹中:八女商工会議所が主催となり、江戸末期に建てられた元造り酒屋の建物をリノベーションしました「八女市横町町家交流館」という歴史的建造物のなかで、日本茶の専門家から八女茶の歴史やお茶の効能、お茶の美味しい淹れ方などを学ぶスクールとなっています。 […]

《茶✕サラリーマン》「茶道」は誰のためのもの?サラリーマンとOLこそが現代の武士。給湯室が「茶室」。【給湯流茶道/ 家元(仮)谷田半休】

お茶好きに「お茶を知っていますか?」と尋ねると、「好きだけど、知らない。」という答えによく出会う。 これは、お茶には、「好き」や「おいしい」だけではすまされない、武道や書道のような日々の鍛錬・修行によって、極める「道」があるという共通認識があるからだろう。 そのようなお茶を現代的な視点でとらえなおす団体がいる。茶道ユニット「給湯流茶道(きゅうとうりゅう・さどう)」だ。 現代の武士とは、企業戦士(サラリーマンとOL)。オフィスの給湯室こそが現代の茶室であると。子供の頃に日々使ったアニメ茶碗で抹茶を点て、茶名には、千利休の「休」の字をもらい、半休、有休、三連休などと名乗る人達だ。 これは、茶道で大切にされている「見立て」なのか?パロディなのか? 2010年より活動を続ける給湯流茶道は、これまでに120回以上のお茶会を開催し、その参加者は茶道初心者から茶人まで2000人を超え、お茶会のテーマも知的好奇心をくすぐるものばかりだ。このような取組は、BBC(英国放送協会)のウェブニュースでも紹介されている。 「抹茶の効能を有閑マダムから、毎日労働と戦う人々に開放せよ。」 現代茶道ムーブメント「給湯流茶道」を牽引する、家元(仮)の谷田半休さんにお話をうかがった。 給湯流茶道 谷田 半休(たにだ はんきゅう) 慶応義塾大学を卒業後、会社員として今も働き続ける。2010年、会社員の「戦場」であるオフィスの給湯室で抹茶をたてる茶道団体「給湯流茶道」を結成。秀吉などの武将が戦場で茶会をしたエピソードを現代に再現し、リストラ、パワハラなどと戦う人の職場で抹茶をたてる。給湯室を飛び出し、ロンドンの弁護士事務所から、廃線になった駅、廃業した純喫茶、道後温泉ストリップ小屋まで、様々な「諸行無常な場」でも茶会を決行。 目次1 オフィスの給湯室で茶会を開く「給湯流茶道」2 簡単で、おいしくて、ほっとする。みんな、コーヒーの代わりに抹茶を飲むのもいいですよ3 1缶1万円の高級品になる!?抹茶の将来を心の底から心配しています オフィスの給湯室で茶会を開く「給湯流茶道」 Q:「給湯流茶道」を立ち上げた経緯をお聞かせください。 谷田:「給湯流茶道」立ち上げの最大の理由は、現代のビジネスパーソンには抹茶や茶会が必要だと考えたことです。 戦国時代に茶道が流行したことはご存じでしょうか。 もちろん当時、立派な茶室での茶会も多く開かれていましたが、その一方で、戦(いくさ)に千利休(戦国時代に活躍した有名茶人)を連れていったり、茶道具を戦場に持参して、休戦日に茶会を開いたりしていたというエピソードが残っています。 […]

《茶✕心意気》現代の売茶翁は、ヨットとクルマに茶室をそなえ、全国3千キロ以上を旅して茶を振る舞う。次は一万人が待つ世界に出帆。【月帆庵/長谷川秀明】

「茶銭は黄金百鎰より半文銭までくれしだい。 ただにて飲むも勝手なり。ただよりほかはまけ申さず」 これは江戸時代に煎茶を庶民に広めた売茶翁(ばいさおう)の言葉だ。売茶翁は61歳の年、京都でお茶をふるまい始めた(1736年)。 ちょうど売茶翁が生きた頃、隠元禅師が煎茶を伝え(1654年)、永谷宗円が伸び煎茶を発明した(1738年)。この頃、抹茶は上流階級の飲み物だった。そして、煎茶が伝来し、佐賀出身だった売茶翁は、煎茶の魅力を市中の人々にまで広めたと言われている。 その時の売り文句が、冒頭の言葉だ。その意味は、「お茶の代金は、お金があるならありったけから、ほんの気持ちまでいくらでもOK。無料で飲むのもあなた次第。ただし無料以下にはまけません。」だ。 売茶翁が煎茶を広めたから、日本には他国に類をみない庶民のお茶文化が息づいているのかもしれない。そしてお茶が当たり前のもてなしとして広く共有され、「お茶は無料で提供されるもの」となったのかもしれない。 今回、紹介する長谷川秀明さんは、64歳で故郷の東北を離れ、茶室付きのヨットと、これまた茶室付きのキャンピングカーで生活し、全国各地を回りながら、無料でお茶をふるまう活動を続けている。すでに3万キロ以上を旅し、3000人以上の方々にお茶をふるまってきた。 そして、今度は世界各国で1万人にお茶をふるまう計画だ。 お茶は、「おもてなしの気持ちをあらわすもの」だ。本来、値段がつくようなものではない。しかし経済優先の現代においては、そんなことは、特に商売では言ってられない。 長谷川さんの活動は、相手に見返りを求めない、本来の「おもてなし」の精神を「一杯のお茶」に込めて、伝え続けている。 船上や車中生活を続けながら、全国、そして今後世界でお茶をふるまう、現代の売茶翁、長谷川秀明さんにお話をうかがった。 長谷川宗水(秀明)(はせがわ そうすい(ひであき)) 茶道裏千家専任講師。お家元より茶名拝領し茶名は「宗水」。秋田県大館市出身 1954年生まれ 10代後半から国内・海外放浪の旅をし、その間に3度アマゾン・アンデス周辺を探検する。 25歳に帰国後、裏千家へ入門。同時期から木工会社勤務と陶芸を習い始める。 30代後半には「遊野」カヌーと家具を製作し始め、50代後半に秋田県・十和田湖に工房を移転させる。50代で裏千家茶名「宗水」を拝領し、60代からヨットで日本周遊お茶の旅を開始。 著書『チープなヨットライフ 2to』 目次1 活動舞台は海と陸。全国をヨットで3万キロ、陸路をキャンピングカーで2万キロ以上を旅しながら、各地で茶をふるまう。目標は1万人。2 最終目的よりプロセスが大事。いまの長谷川さんの原点ともなる放浪の旅とは3 […]

《茶✕茶室》「茶室」をかついで、世界中の街や自然へ「茶の世界」を広げる。原点回帰の茶室「帰庵」。【稲井田将行・戸田惺山住職】

「茶室」。 「茶の湯」という総合芸術の集大成といえる空間、「茶室」。「茶室」という名前は広く知られている一方、大半の人にとって「茶室」は、その空間に足さえ踏み入れたことのない「聖域(サンクチュアリ)」だ。コーヒーと違って、「お茶はタダ(無料)」が当たり前なのに、その空間(茶室)は聖域という、相反性がお茶の魅力であり、矛盾だろう。 今回、ご紹介する竹の茶室「帰庵(きあん)」は、ミニマルでモバイル性を究極に高めた茶室である。この茶室の総重量は、わずか5.5kg。担いで山も登れるし、飛行機の預け荷物として海外にも持ち出し可能だ。 茶室に庭をわざわざ設けて自然を再現するのではなく、自然の中に茶室を持ち出し、庭にできる。必要最低限の竹材だけで造られたこの建築物は、極めて質素で不完全。しかし不完全こそが「侘び(わび)」の美学が宿る空間だ。 世界じゅうの街や自然に聖域だったはずの茶室をかついで持ち出し、茶の世界を広げているお二人、「帰庵」の考案者・稲井田将行さんと京都・大徳寺大慈院住職の戸田惺山さんに、お話を伺った。 稲井田将行(いないだまさゆき) 1976年 大阪府豊中市生まれ 京都市在住。同志社大学を卒業後、精密機械メーカーを経て、自然と共存した数寄屋建築の魅力に惹かれ、建築の道へ。大本山大徳寺御用達の株式会社山中工務店へ。茶室などにみられる侘び寂び(わびさび)の独特な空間美を世界に伝える為に、一人で持ち運び、組み立てができる竹の茶室「帰庵」をつくる。世界各地で帰庵を建て、自然を感じながらお茶を楽しむ活動をしている。 戸田惺山(とだせいざん) 1967年 京都市生まれ 大徳寺大慈院住職。同志社大学卒。会計事務所に勤務後、仏の道へ。天龍寺、大徳寺の僧堂で5年半の修行生活をおくる。フランス、ドイツでも座禅指導や教会で読経をする。山歩きが好きで、自然を感じながらお茶を楽しめる帰庵でお茶を点て、日本の四季を楽しんでいる。 目次1 外でお茶飲んだほうがもっとおいしいんじゃないか。そんな発想から生まれた竹の茶室「帰庵」2 不完全でミニマム。だからこそ人によって完成される“見立て”の世界。3 茶道は人と親しくなる、茶室は良好な人間関係を考察・構築するための舞台4 日本茶の未来を考える 外でお茶飲んだほうがもっとおいしいんじゃないか。そんな発想から生まれた竹の茶室「帰庵」 Q:「帰庵」の構想のきっかけをお聞かせください。 稲井田:僕は普段仕事でも室内の茶室を造っていますが、造る度に「この室内でお茶を飲んでおいしいのだろうか」と度々思うことがありました。 帰庵を肩に担ぐ稲井田さん 部屋の中で食べるおにぎりより、自然のなかで食べるおにぎりのほうがおいしく感じたりするじゃないですか。お茶も同じではないかと思ったんです。 自然の中でお茶が飲めるといいなと思ったのがいちばん最初のきっかけです。 Q:はじめて稲井田さんから「帰庵」の構想を聞いたとき、戸田さんはどんな印象をもたれたのでしょうか。 戸田:私はおもしろいなと思いましたし、自然のなかでお茶を飲むということをやってみたいと思っていたんですよね。 […]

《茶✕クリエイティブ》クリエイティブの観点から考える日本茶の可能性【REDD inc. / 望月重太朗】

「酒の席でお茶を飲む。」 この場合のお茶とは、「ノンアルコールの飲みもの全般」というニュアンスだが、「お酒が飲めない」のではなく、あえて酒の席で「お酒を飲まない選択」をする人が増えている。 その理由は、体質、体調、気分、飲み会後の車の運転などさまざま。「飲まない選択」は、昔からよくある話で特にめずらしい話ではない。しかし、かつては「消極的な理由」だった酒の席でお酒を「飲まない選択」が、「積極的な理由」になりつつあるのが、最近のトレンドとなっている。 「スマドリ(スマートドリンキング)」と言うキーワードが、2022年、電通とアサヒビールにより設立された「スマドリ株式会社」等を中心に推進されているのもその流れの一つだ。 そして、その源流のひとつに「ソバーキュリアス」というコンセプトがある。 ソバーキュリアス(SoberシラフとCurious好奇心の2語を組み合わせた造語)とは、2010年代初めに始まったムーブメントで、「あえてお酒を飲まない選択」をするライフスタイルのこと。最近ではZ世代の若者を中心に欧米でも広がりつつある。 「あえてお酒を飲まない選択」が広がることにより、「酒の席(パーティー)」は、これまで夜&屋内から、昼間&屋外にも広がっていくだろう。 ノンアルコール飲料の国内市場が3000億円を超えるという試算もある中、お茶にはどのような可能性があるのだろうか? 「あえてお酒を飲まない選択」の先にお茶の可能性を見出し、すでにさまざまな活動に着手しているお一人である望月重太朗さんにお話をうかがった。 望月重太朗(もちづき じゅうたろう) 2003年、博報堂アイ・スタジオ入社。2019年1月、デザインR&Dをテーマとした会社 REDD inc. 設立。主にデジタルを中心としたクリエイティブディレクション、アートディレクション、未来洞察からのストーリーライティングを軸に様々な企業や商品のプロモーション/ブランディングの企画立案・制作に従事。前職ではR&D部門を率い、Pechatなどを始めとした120を超えるプロトタイプ、新規プロダクト/サービスを開発。また2018年よりフードリサーチプロジェクト「UMAMI Lab」の活動を開始し、日本の各地域でワークショップの実演や大学機関との共同セミナーなどを実施。さらに海外にも活動領域を拡げ、SXSW(アメリカ)やBorder Sessions(オランダ)で「旨味」をテーマにしたイベント開催やワークショップを行う。その他活動として、武蔵野美術大学 非常勤講師、Border Sessions 2019 & 2018 […]

《茶✕冷凍保存》一年中、新茶の香りが楽しめる!?蒸したての生葉を冷凍保存し、店頭で製茶。冷凍茶葉がひらく新たな可能性。【売茶中村/中村栄志】

人類がお茶を飲むようになって、数千年。その間、今に至るまで茶葉は乾燥して保存されてきた。この50年、冷凍技術が進化・普及し、グローバルなコールドチェーン(低温物流)が実現した。外国産の生肉がスーパーに並び、家には必ず冷蔵庫がある。しかし今も昔も茶葉は当たり前のように乾燥して保存されている。 これまでも冷凍保存した茶葉の活用事例はもちろんある。例えばこの30年、各茶産地における手揉み製茶保存会の復興がみられるが、この理由の一つとして、手揉み製茶の練習用に冷凍茶葉が手軽に使えるようになったことも挙げられるだろう。 今回フィーチャーする売茶中村では、冷凍茶葉の可能性をさらに進化させている。「売茶中村」では、全国の茶産地から蒸したての生葉を集め、冷凍保存している。茶葉を販売する店舗内で、冷凍茶葉を年中製茶し、来店者は、これまで旬の茶産地でしか体験できなかった新茶の香りを嗅ぎ、製茶を体験し、購入することが、年中できるようになった。 これまでブレンド茶しかなかった日本茶の世界において、シングルオリジンの日本茶が浸透しつつある今。売茶中村は、さらにその先にある価値を探求しているといえる。 旬の茶工場でしか嗅ぐことができなかった「新茶の香り」。現代の冷凍技術を取り入れ、年中できたての新茶の香りを楽しめる「売茶中村」の挑戦をうかがった。 中村栄志(なかむら えいじ) 1991年、京都府宇治市の茶商の家系に生まれる。大阪の大学卒業後、鹿児島県霧島市の茶農家[西製茶工場]で6年半に渡り、茶の栽培・製茶・販売に携わる。2022年10月、京都・宇治で喫茶に冷凍茶葉の茶工場を店内に有する日本茶専門店[売茶中村]をオープン。 目次1 製茶したてのお茶を味わえる、唯一無二のお店2 座右の銘は「我逢人」。人との出会いを大切に、仕事に励んでいきたい3 良いものは必ず愛される。茶業界を支えるのは「信念に基づいた良品」 製茶したてのお茶を味わえる、唯一無二のお店 Q:[売茶中村]はどんなお店ですか? 中村:京都府宇治市、平等院から歩いて1〜2分ほどのところにある、小さな製茶場と喫茶を併設したお茶の専門店です。 このお店をひと言で表現すると、煎茶が出来上がるさまが目の前で見られる場所。多くの人にとって、今までにないお店だと思います。 煎茶は、茶畑から摘んだばかりの柔らかい新芽を蒸して、揉みながら乾燥させて作られます。揉んだばかりのお茶を味わえるのは、これまで製茶場で働く人だけでした。 実は僕自身、初めて乾燥機から出てきたばかりの新茶を味わったとき、一般的に売られている新茶との違いに驚きました。爽やかで、どこかワイルドさも感じられて、しかも茶葉はなめらかであたたかい。そこには、自分が知らないお茶の世界が広がっていたのです。 店内で製茶中のお茶[売茶中村]では、これまで製茶場で働く人の特権だった「新茶:製茶したてのお茶(揉んだばかりのお茶)」を味わっていただけます。 [売茶中村]で味わっていただける新茶は、一般に出回っている新茶と鮮度がまったく違います。製茶したてのお茶は、新茶が出回る時期でもめったに飲めない、フレッシュな味がするんですよ。しかも一年中、どんな時期でも製茶したての新茶を味わっていただけます。本物志向の方や上質でおいしいものを好む方に、ぜひお試しいただきたい味です。僕はこの味を広く知ってもらいたい一心で、喫茶に製茶場を併設させました。 店内に並ぶ製茶用の機械たちさらには、普通ではまず見られないようなお茶づくりの裏側を、すぐそばで見られるのも[売茶中村]の魅力です。新茶の香りや音、「誰が/どのようにつくっているか」「なぜこの味になったのか」を知ってもらえる、唯一無二のお店だと自負しています。 製茶中の茶葉を触ったお客さんは「製茶したてのお茶ってあったかいんや!」「こんなにしっとりしてるん?」と驚かれますね。 […]