《茶✕冷凍保存》一年中、新茶の香りが楽しめる!?蒸したての生葉を冷凍保存し、店頭で製茶。冷凍茶葉がひらく新たな可能性。【売茶中村/中村栄志】
人類がお茶を飲むようになって、数千年。その間、今に至るまで茶葉は乾燥して保存されてきた。この50年、冷凍技術が進化・普及し、グローバルなコールドチェーン(低温物流)が実現した。外国産の生肉がスーパーに並び、家には必ず冷蔵庫がある。しかし今も昔も茶葉は当たり前のように乾燥して保存されている。 これまでも冷凍保存した茶葉の活用事例はもちろんある。例えばこの30年、各茶産地における手揉み製茶保存会の復興がみられるが、この理由の一つとして、手揉み製茶の練習用に冷凍茶葉が手軽に使えるようになったことも挙げられるだろう。 今回フィーチャーする売茶中村では、冷凍茶葉の可能性をさらに進化させている。「売茶中村」では、全国の茶産地から蒸したての生葉を集め、冷凍保存している。茶葉を販売する店舗内で、冷凍茶葉を年中製茶し、来店者は、これまで旬の茶産地でしか体験できなかった新茶の香りを嗅ぎ、製茶を体験し、購入することが、年中できるようになった。 これまでブレンド茶しかなかった日本茶の世界において、シングルオリジンの日本茶が浸透しつつある今。売茶中村は、さらにその先にある価値を探求しているといえる。 旬の茶工場でしか嗅ぐことができなかった「新茶の香り」。現代の冷凍技術を取り入れ、年中できたての新茶の香りを楽しめる「売茶中村」の挑戦をうかがった。 中村栄志(なかむら えいじ) 1991年、京都府宇治市の茶商の家系に生まれる。大阪の大学卒業後、鹿児島県霧島市の茶農家[西製茶工場]で6年半に渡り、茶の栽培・製茶・販売に携わる。2022年10月、京都・宇治で喫茶に冷凍茶葉の茶工場を店内に有する日本茶専門店[売茶中村]をオープン。 製茶したてのお茶を味わえる、唯一無二のお店 Q:[売茶中村]はどんなお店ですか? 中村:京都府宇治市、平等院から歩いて1〜2分ほどのところにある、小さな製茶場と喫茶を併設したお茶の専門店です。 このお店をひと言で表現すると、煎茶が出来上がるさまが目の前で見られる場所。多くの人にとって、今までにないお店だと思います。 煎茶は、茶畑から摘んだばかりの柔らかい新芽を蒸して、揉みながら乾燥させて作られます。揉んだばかりのお茶を味わえるのは、これまで製茶場で働く人だけでした。 実は僕自身、初めて乾燥機から出てきたばかりの新茶を味わったとき、一般的に売られている新茶との違いに驚きました。爽やかで、どこかワイルドさも感じられて、しかも茶葉はなめらかであたたかい。そこには、自分が知らないお茶の世界が広がっていたのです。 店内で製茶中のお茶[売茶中村]では、これまで製茶場で働く人の特権だった「新茶:製茶したてのお茶(揉んだばかりのお茶)」を味わっていただけます。 [売茶中村]で味わっていただける新茶は、一般に出回っている新茶と鮮度がまったく違います。製茶したてのお茶は、新茶が出回る時期でもめったに飲めない、フレッシュな味がするんですよ。しかも一年中、どんな時期でも製茶したての新茶を味わっていただけます。本物志向の方や上質でおいしいものを好む方に、ぜひお試しいただきたい味です。僕はこの味を広く知ってもらいたい一心で、喫茶に製茶場を併設させました。 店内に並ぶ製茶用の機械たちさらには、普通ではまず見られないようなお茶づくりの裏側を、すぐそばで見られるのも[売茶中村]の魅力です。新茶の香りや音、「誰が/どのようにつくっているか」「なぜこの味になったのか」を知ってもらえる、唯一無二のお店だと自負しています。 製茶中の茶葉を触ったお客さんは「製茶したてのお茶ってあったかいんや!」「こんなにしっとりしてるん?」と驚かれますね。 Q:[売茶中村]は、技術的に大変難しいとされる「冷凍茶葉」を取り扱っていることで業界内からも注目されていますね。 中村:ありがとうございます。「うちもやってみたけれど、挫折したよ。すごいよね」と言ってくださる方もいますね。 僕も今のスタイルにたどり着くまでは、いろいろと試行錯誤しましたし、本当に大変でしたね。やっぱり、きちんと冷凍しないと、どうしても茶葉が傷んでしまいますから。さまざまトライする中で「手揉みくらいの量ならば冷凍できる」「少量製茶機ならうまくいきそうだ」ということがわかったことがブレイクスルーになりました。 [売茶中村]では、5月に摘んだ茶葉をすぐに蒸し、急速冷凍して保管したのち、使う分だけを解凍し、熱をくわえながら揉み込み乾燥させて揉みあげています。完成した茶葉は色もきれいですし、新茶の香りもしっかりと残っているんですよ。 […]








