《茶✕窒素ガス》鎌倉発。窒素ガスでお茶を発泡!?ビールのようなポップな見た目で、魅せて広げるお茶の可能性【CHABAKKA TEA PARKS/三浦健】

「お茶✕窒素ガス」と聞いて、「茶葉の保存」を想像したら、きっとあなたは業界人だろう。

窒素ガスで発泡させた、見た目がまるでビールみたいなお茶「ドラフトティー」を日本で初めて提供したのは、鎌倉を拠点とするCHABAKKA TEA PARKS。
CHABAKKA TEA PARKSでは、”おしゃれに楽しむ日本茶エンターテインメント”をコンセプトにお茶の新しい楽しみ方を提案している。

看板メニューの一つである「ドラフトティー」は、独自に研究を重ね、改良して作りあげた特製ビアサーバーから抽出し、クリーミーな泡とまろやかな口当たりが特徴だ。

茶葉はシングルオリジンと呼ばれる単一農園・単一品種にこだわって日本各地から厳選し取り揃えている。またタンブラーや茶香炉、Tシャツなどのアパレル、お茶を使ったオーガニックソルトやお茶漬けの素といった食品まで幅広い商品を展開している。

お茶の提供方法もドラフトティーの他にドリップティー、ラテやブレンドなど遊び心にあふれ、固定概念に囚われないやり方で、日本茶の可能性を感じさせてくれてる。

そして2号店とも言えるCHABAKKA LABORATORY +TEA お茶漬けスタンドを由比ヶ浜にも構えており、2024年には静岡県・熱海で鎌倉店の3倍の広さをもつ3号店もオープン。

CHABAKKA TEA PARKS の三浦健さんにお話をうかがった。

三浦健(みうら けん)
2009年、株式会社TOKYO BASE入社。
立ち上げメンバーとして創業年度から携わり、事業部エリアマネージャーとして店舗運営・商品企画・人材育成・新店舗の立ち上げなど幅広い分野で従事。
2017年、約12年に渡り携わってきたファッション業界を卒業。
2018年、自身が代表を務める株式会社Third Bayを設立。
同年4月、神奈川県鎌倉市にCHABAKKA TEA PARKSを開業。
日本茶セレクトショップ事業「CHABAKKA TEA PARKS」、サウナ×日本茶ブランド事業「SAUNA+TEA」の運営をメインに、食の専門学校「レコールバンタン」講師、行政や大学での講演活動、企業の経営コンサルティングやリブランディングサポートなどを手掛ける。
斜陽産業と化している日本の伝統産業やモノづくりの現場に焦点を置き、斬新な切り口とアイデアで新たな付加価値を見出した商品やサービスを国内外に発信する。

日本初。窒素ガスで発泡させたお茶「ドラフトティー」を生み出したCHABAKKA TEA PARKS

Q:ドラフトティーについて教えていただけますか。

三浦:ドラフトティーは窒素を含ませることで発泡させた日本茶で、CHABAKKA TEA PARKSの看板メニューかつ、2018年の開業と同時に提供開始した、日本初の商品でもあります。特性のビールサーバーから窒素の圧力をかけて日本茶を注ぐのですが、ビールのような見た目をしています。

ドラフトティー確かに並べて見ると泡の感じがよりビールっぽさを際立たせているような。
「ドラフトティー」は日本初であり、CHABAKKA TEA PARKSの商標商品でもあるので、うちのお店でしか飲めない、イチオシのお茶です。

日本茶を淹れるのが急須じゃなくたっていい。いろんな楽しみ方をみんなで楽しみたい。そんな思いから生まれたドラフトティー

Q:ドラフトティーのきっかけを教えてください。

ドラフトティーCHABAKKA TEA PARKでしか体験できないドラフトティー。見た目はビールそっくり。
三浦:じつは、最初からドラフトティーの構想があったわけではありませんでした。

CHABAKKA TEA PARKSのコンセプトは「おしゃれに楽しむ日本茶エンターテイメント」なのですが、僕たちは日本茶を「おしゃれ」「楽しむ」「エンタメ体験」に結びつけることをやりたいと思っていて。お客様が今までに味わったことのないようなわくわくする体験を届けたいと思っていました。

コンセプトに立ち返って考えてみたとき、そもそも僕たちがターゲットにすべきは日本茶を日常的に飲むコアな層ではなく、一番遠く、日本茶を普段飲まない、興味がないといったお客様たちだと思いました。

そうなると年齢層は必然的に10代後半から30代中盤くらいがメインターゲットになります。

そのメインターゲットの思考や日常生活を考えた結果、そもそも日本茶に興味もないその人たちに日本茶との接点を持ってもらうために「淹れ方」を従来の方法から変えてみようと思いました。

「急須を使え」と強制力をもって伝えるのではなく、色々な淹れ方で日本茶は楽しめるということを知ってもらおうと思いました。そこで急須を使わずに日本茶を淹れる方法を考え、工夫するようになりました。

ドラフトティー注ぐところまで体験できるのが楽しい。
そしてビールのような日本茶ができたら、ビールサーバーのような機械から日本茶が出てきたら、メインターゲット層となる若い世代に興味をもってもらえるんじゃないかと思いつきました。

なのであくまで、きっかけとなるのは「どうしたら日本茶から遠い、興味のない方々を振り向かせられるか」という設定をもったことだと思います。

Q:あのドラフトティーのサーバーは三浦さんが設計されたんですか?

三浦:一緒に動いてくれた人はいましたが、基本的に構想から改良、どんな日本茶を使ってどうやって抽出するかなどは僕が主導となって考えました。

Q:ドラフトティーサーバーの他にも、特殊なコーヒードリッパーで日本茶を抽出していますよね。

ドリップティーコーヒーを淹れているように見えますが、これもお茶なのです。
三浦:そうですね、日本茶に興味のない人を振り向かせるために色々と考えた結果出てきたものです。

他にもCHABAKKA TEA PARKSでは、抹茶ラテをつくる際、カクテルシェイカーで振って点てるんですよね。そうすると、お客様にしてみれば、カクテルをつくってもらって飲むような気分で、日本茶を飲む体験になるんですよね。

こんな感じで、少しでも楽しんでもらえるように工夫を色々しています。

日本茶をエンターテイメントに楽しむCHABAKKA TEA PARKS

Q:CHABAKKA TEA PARKSは、どのようなお店でしょうか。

chabakka tea parksの店内右側の棚にある商品も、お店へ足を運んだ際には見てみてほしい。
三浦:CHABAKKA TEA PARKSはおしゃれに楽しむ日本茶エンターテイメントを体現する場所ですね。これはコンセプトでもあるんですが。

僕にとっては、CHABAKKA TEA PARKSは、自分たちの理念「世界を変え、人を変え、未来が過去を変え、そして新たな産業を生み出す」を叶えるための手段ともいえます。

Q:三浦さんが経営している株式会社Third Bayの理念を実現させたい一つの領域が茶業界なのでしょうか。

ドラフトティー昼間からビールを楽しむ三浦さん。ではなくこちらもドラフトティー。
三浦:そうですね、茶業界だけではなく、僕たちは主に斜陽産業になってしまっている日本の産業、特に伝統工芸に焦点を置いています。

その斜陽産業に対して斬新なアイデアと切り口から全く新しい付加価値を見出したアプローチをすることによって、お客様たちの目をその業界に向け、陽の光をあてたいと思っています。

Q:[CHABAKKA TEA PARKS]を運営する上での一番の魅力を教えてください。

三浦:日本茶に関することも、ビジネスの広げ方という観点でも、僕自身まだまだ知らないことがたくさんあって。その「知らない」という未知へ向かって「覚えていく」ことが一番楽しく、僕にとっては魅力ですね。知らないことを知り、それに向かって挑戦するのが楽しいです。

三浦さんドリップでお茶を淹れてくれる三浦さん
僕は物事の状況や、それまでの流れを一転させてしまう「ゲームチェンジャー」になりたいと思っています。そのために何ができるのかを考えてアクションし続けていくことに楽しさを見出しています。

失敗も、次に挑戦するための壁だと思うと、それを乗り越えていくことが楽しいと思えちゃったりします。

Q:様々なアイデアが湧く秘訣はありますか。

三浦:おそらく僕自身、最初は全く日本茶に興味がなかったからこそアイデアが思い浮かぶのかなと。僕はアパレル業界出身なので、茶業界からすると異業種なんですよね。その異業種で学んだことが生きていたりするのかな、とは思います。

Q:ベンチマークや参考にするところは異業種だったりするのでしょうか。

三浦:基本的に同業他社はみないようにしています。もちろん同業でおもしろそうなことに取り組んでいる方もいるとは思うんですが、そこを参考にして何かを始めても結局二番煎じになってしまうので。

いまでも、基本的に僕が参考にするのはエンタメ業界で、そこから情報収集をするようにはしています。

茶業界は課題山積みな日本の縮図!だからこそ未来には可能性が眠っている。

Q:三浦さんにとって日本茶とはどのような存在ですか?

三浦:とても赤裸々にお話をすると、僕は茶業界は日本が抱えている課題の縮図だと思っていて。そこを微力ながらでも僕らが攻めて、小さな変化さえも生み出していかないと今後の未来はないと思っているんです。

ただ、一方で課題だらけだからこそ、茶業界には可能性があり、できることが無限にあると思います。

Q:日本茶を取り扱う難しさを感じることはありますか?

三浦:僕たちCHABAKKA TEA PARKSがターゲットとしているお客様はお茶との接点が限りなく、無いに等しい、距離の遠い方々なので、いらっしゃるお客様で日本茶に馴染みのある方が少なく、日本茶に対して結構ネガティブな印象を持って入ってくるかたも多いんです。

chabakka tea parksお客様と楽しそうにお話する三浦さん(写真:左)
なので、そういった馴染みのない、ネガティブな印象をもっているお客様に対して、お客様の立場・目線でお茶のことを伝えなければいけない。日本茶を独りよがりな解釈をして、それを伝えるというのは、あってはならないことなので、そのバランスは難しいなと思います。

逆にいうと、お客様の目線に立って日本茶のことをお伝えできれば、絶対にその価値は届くと思うんですよね。

Q:これからの茶業界の未来はどんなふうになっていくと思いますか。また、どのようになって欲しいですか。

三浦:茶業界はまだまだ伸び代のある世界ですので、チャンスがたくさんあると思っています。

中国や台湾など元々お茶文化がある国へ戦いにいく必要は出てくるんですけれど。ただそういったお茶の本場といわれる世界と戦えるようになれば、その先には、さらに未来があると思うんですよね。

三浦さんCHABAKKA TEA PARKSへ行ったら笑顔で迎えてくれる三浦さん
そして、茶業界はいま、変革期を迎えていると思っていて。この数年で本当に様々な取り組みが生まれましたし、世代交代などが行われる中で新しい価値もこの先もっと誕生してくると思うんです。そして、それを茶業界だけにとどめてはいけなくて。

新しい日本茶の価値創造を茶業界の外にある、色々な他の業界と切磋琢磨しながら生み出していかなければいけないと思います。

どう絡ませ、どう相乗効果を生み、どう新しいものを創りだして広げてゆくか。こういったことを茶業界にとどまらず日本全体で考えて行くべきだと思います。