プラハ ティーフェスティバル 2024

2月24日ー25日に第2回プラハティーフェスティバルが開催されました。さらに、イベント開催中の1週間はプラハにあるティーハウス周辺で様々なお茶の催しがありました。このフェスティバルの企画者 Agha さんのおかげでイベントの質はどれも非常に素晴らしい出来栄えでした。 このフェスティバルには多くのティーメンバーが参加するので、もちろん私たちも見逃せません! イベントでは、多くの素敵な催しがありました。そして、名だたる出展者や茶陶アーティスト達は、ヨーロッパからそしてヨーロッパ以外からチェコ共和国に駆けつけた沢山のお茶愛好家をワクワクさせていました。お茶愛好家にとってこのイベントは見どころが沢山あり、本当に語り三昧です!ただまず最初は私たちのお気に入りのトピック:日本茶に注目しましょう。 私たちは長崎いけどき代表者かつGJTea仲間のMarjolein Raijmakersさんと一緒に出展しました。彼女は長崎の東彼杵で採れるお茶を広めるためにヨーロッパ各地を周っていました。玉緑茶はここでの主役の一つかつそのエリアの名産品です。ブースではそれに加え、さまざまなほうじ茶の個性と温かさが、多くのお茶愛好家の心を魅了していました。また、不良品のお茶を使って染められた手拭いは早くも売り切れ間近でした! Rishe TeaのAreekさんはチェコ共和国でのお茶フェスティバルの常連さんです。彼は日本の茶産地を旅しておられ、彼のブースでは日本の有機栽培緑茶が綺麗に並べられていました。彼についに対面で出会えたのは光栄な限りです! 私たちの友、フィンランドにあるNari Teaを営むYilingさんとPatrickさんは白い茶葉で作られた煎茶を持参し、さらに日本で開発された真新しいドリッパー「ときね」は完璧な出来栄えでした。試すのが待ち遠しいですね! 日本茶インストラクター・スペシャリストのOscar Brekellさんはわざわざ日本からこのフェスティバルに駆けつけたそうです。彼はオリジナルブレンドティー「Senchaism」コレクションを出展していました。さらに、彼は煎茶のワークショップを4回開催し、そこでは昔ながらの焙烙を使ったほうじ茶を炒るデモンストレーションで観客に感動を与えていました。 さらに、ドイツから参加のKEIKOではオリジナルセレクションである抹茶と煎茶の催しがありました。 上田流和風堂の練習生Flora Grimaldiさんは濃茶のデモンストレーションとともに、濃茶と薄茶の違いについて語りました。 日曜の午後、私たちは国際日本茶協会を紹介する機会がありました。Annaさんが私たちのミッション・5年間での活動と活躍を共有する中、他のメンバーは日本茶を観客に振舞いました。約40人がこのイベントの開催場である素敵なシアターロームに集まりました。彼らは私たちがコラボしている茶農家さんが作った3種類のお茶を堪能しました。最初にうてな茶屋のほうじ茶、続いて吉田茶園の和紅茶、最後にSAMURAI teafarm 牧之原山本園と勝間田開拓茶農協のアロマ煎茶を提供しました。 今回のフェスティバルを私はとても満喫しました。私たちのハイライトの一つはなんといっても温かいティーコミュニティでした。フェスティバルを通して、多くの私たちのメンバーに出会えたこと、そしてブースや講演中での彼らの積極的なサポートと活躍は素晴らしものでした。全体で22名の世界日本茶協会のメンバーがこのイベントに参加しました。ほとんどのメンバーはヨーロッパから参加し、時にはカナダから駆けつけてくださった人:Lee教授(私たちの初代メンバーの一人!)もいました。何人かは以前お会いしたことのある方々で、また再会できて嬉しかったです。その他のメンバーはオンラインでしか会ったことがなかったので、このイベントでついに対面で彼らと出会えました!!彼らとおしゃべりしたり、お茶を一緒にしたり、時にはディナーに行ったりと充実した時間を過ごしました。私たちは次のティーイベントを楽しみにしています!! Sofie Vercauterenさん, […]

《茶✕製法》日本初の燻製茶。海外でも評価が高まる衝撃の香り。パイオニアが切り拓く日本茶の新カテゴリー。【カネロク松本園/松本浩毅】

日本で生産されるお茶の半分以上が煎茶だ。しかし近年、煎茶の消費の落ち込みは大きく、抹茶や和紅茶、ウーロン茶などへの転換が進んでいる。 これまでのうまみ重視から、香りへと移行し、ウーロン茶や和紅茶など発酵茶への多様化が少しずつ進んでいるのがいまの茶業界の現状だ。 そのような中、燻製という製法に取り組んでいる生産者がいる。静岡県のカネロク松本園だ。 松本さんは中国茶にあるラプサンスーチョンという、松葉で燻製した紅茶からインスピレーションをうけ、燻製紅茶づくりをスタートした。 松本さんが燻製紅茶をつくり始めた当時は、燻製の日本茶は存在していなかった。まさに新しい日本茶のジャンルを生み出したのだ。いまでは10年以上、燻製茶の開発に取り組み、ウイスキー樽、桜、シナモン、カカオなどを使い、今は10種類以上の燻製茶を販売している。 松本さんの燻製紅茶は、2020年、農林水産省の海外輸出有望商品として選出、国際銘茶品評会でも銀賞を受賞。フランスを中心とした海外でも高い評価を受けている。 そんな茶業界において新たな製法「茶葉の燻製」を確立させた松本さんにお話をうかがった。 松本浩毅(まつもと ひろき) 1982年生まれ。41歳。静岡県島田市で家業としてお茶を生業としている。静岡県立農林大学校茶業科を卒業後に就農。趣味は仕事。四人の子とお茶の樹を育てている。 表現者として、自分らしいスタイルで唯一無二を日本茶で表現したい。そして生まれた国産初の「燻製紅茶」 国内初の燻製紅茶の生みの親、カネロク松本園の松本さん Q:カネロク松本園さんでつくられている燻製紅茶の特徴をお聞かせください。 燻製紅茶 松本:元々燻製紅茶を始めるきっかけとなった中国のラプサンスーチョンは燻製材に松を使うのですが、僕はラプサンスーチョンをつくりたいわけではなく、国産初である燻製茶で世界唯一のオリジナル商品を作りたいと思っています。なので色々な燻製材で燻製茶づくりに挑戦しています。 Q:お茶の木でも燻製に挑戦されたのですか? 松本:お茶の木も試してみましたよ。ただ、お茶の木で燻製したお茶は……何というかおもしろみに欠けていたので、今はつくってはいないです。 Q:そもそも燻製のお茶にフォーカスしようと思った理由はなんですか? 松本:じつは、別に燻製ではなくても良かったんですよ。 私は祖父や父が畑づくりをしているのを見ながら育ちましたので、これまでお茶以外の農作物を作ったり異業種に就くという考えを持ったことがないんですね。 ただ、お茶農家を自分の生涯の仕事として生きていくのであれば、自分のスタイルと言える何かしら人と違うものが欲しいなと思っていました。 「特徴的なお茶をつくりたい」という意味ではフレーバーティーが国内でも広まってきているのを見ていて、そういったお茶の楽しみ方も多様性があって良いと思っています。 […]

《茶✕窒素ガス》鎌倉発。窒素ガスでお茶を発泡!?ビールのようなポップな見た目で、魅せて広げるお茶の可能性【CHABAKKA TEA PARKS/三浦健】

「お茶✕窒素ガス」と聞いて、「茶葉の保存」を想像したら、きっとあなたは業界人だろう。 窒素ガスで発泡させた、見た目がまるでビールみたいなお茶「ドラフトティー」を日本で初めて提供したのは、鎌倉を拠点とするCHABAKKA TEA PARKS。CHABAKKA TEA PARKSでは、”おしゃれに楽しむ日本茶エンターテインメント”をコンセプトにお茶の新しい楽しみ方を提案している。 看板メニューの一つである「ドラフトティー」は、独自に研究を重ね、改良して作りあげた特製ビアサーバーから抽出し、クリーミーな泡とまろやかな口当たりが特徴だ。 茶葉はシングルオリジンと呼ばれる単一農園・単一品種にこだわって日本各地から厳選し取り揃えている。またタンブラーや茶香炉、Tシャツなどのアパレル、お茶を使ったオーガニックソルトやお茶漬けの素といった食品まで幅広い商品を展開している。 お茶の提供方法もドラフトティーの他にドリップティー、ラテやブレンドなど遊び心にあふれ、固定概念に囚われないやり方で、日本茶の可能性を感じさせてくれてる。 そして2号店とも言えるCHABAKKA LABORATORY +TEA お茶漬けスタンドを由比ヶ浜にも構えており、2024年には静岡県・熱海で鎌倉店の3倍の広さをもつ3号店もオープン。 CHABAKKA TEA PARKS の三浦健さんにお話をうかがった。 三浦健(みうら けん) 2009年、株式会社TOKYO BASE入社。 立ち上げメンバーとして創業年度から携わり、事業部エリアマネージャーとして店舗運営・商品企画・人材育成・新店舗の立ち上げなど幅広い分野で従事。 […]

《茶✕パッケージ》見た目はタバコ、中身はお茶。世界を茶化すちゃばこがお茶のすそ野を広げる理由【ショータイム/森川翔太】

茶葉を保存・携帯するには、パッケージ(容器)が必要だ。 江戸時代、茶葉は「茶壺」と呼ばれる陶器の壺で保存されていた。そして明治になると亜鉛板を内張りした木箱「茶箱」が登場し、その後、金属製の「茶缶」へと移り、現在は、アルミ薄膜と樹脂シートが一体となった「茶袋」に茶葉は保存されるようになった。 茶袋は、さまざまな形状に加工でき、全面に色鮮やかな印刷も可能だ。 そんなお茶のパッケージを使って、世の中を茶化している商品がある。 タバコの箱にしか見えない紙箱に、これまたタバコサイズのスティック粉末茶を8本詰め込んだ、ちゃばこだ。 「ちゃばこと水」があれば、「タバコと火」と同じくどこでも一服できる。 この手軽さとデザインの奇抜さが話題になって、ちゃばこは全国に広がっている。 全国の茶産地で「ご当地ちゃばこ」が作られ、今やちゃばこは100種類以上、全国約200ヶ所の土産店や生活雑貨店などで販売されている。なかには、「たばこ自動販売機」ならぬ「ちゃばこ自動販売機」が設置されている場所もある。 また、たばこのパッケージに必ずある警告文は、ユーモアたっぷりな推薦文となっている。ちゃばこで世界を茶化して、お茶のすそ野を広げている、(株)ショータイム代表 森川 翔太さんにお話をうかがった。 森川翔太(もりかわ しょうた) 1983年静岡県生まれ。東京での出版・広告業従事を経て2015年に(株)ショータイムを設立。全国的に苦境が続く茶業界において、“次世代顧客の獲得”と“生産者の技能に対する工賃の是正(茶価の向上)”をテーマに、リーフ茶の商品開発や日本茶の普及活動を実施。 茶業界に新たな舞台や演出、観客を導入(動員)し、今一度茶業界の“見せ場(ショータイム)”を創出することで、日本各地の茶産地に息づくリーフ茶文化の振興及び未来への継承を目指す。 「タバコ」ではなく「ちゃばこ」。「ちゃばこ」って何? Q:ちゃばこについて教えてください。 森川:ちゃばこは、タバコのような見た目のパッケージに粉末の日本茶スティックが入っている商品です。 ちゃばこをつくるきっかけとなったアメリカ旅行での一枚アメリカ旅行の直前、おみやげに何を持っていこうかと考えていました。 Airbnbのような民泊に泊まるつもりだったんですが、僕は英語が話せなかったので……何かコミュニケーションツールになるようなものをいくつか持っていきました。その時に持っていったものの中で喜ばれたのが日本茶だったんです。 海外での抹茶人気が高まる一方で、国内では急須を持っている⼈の絶対数が減っています。そのような状況で、今後「茶葉自体の携帯性(持ち運びの便利さ)」が、重要な指標のひとつになってくると確信しました。 初代ちゃばこのラインナップそして、持ち運びが便利な携帯性の高いものってどんなものだろう……と考えていました。タブレットやチューインガム、色々探しているなかで、コンビニでずらっとタバコが並んでいるのを見たときに「これだ!」と思ったんです。 […]

《茶✕大型施設》年間来場者数100万人を目指して。お茶を体験できる商業施設は、生産者と消費者の理想と現実を近づけるハブになれるのか? 【KADODE OOIGAWA】

日本最大級のお茶を体験できる商業施設KADODE OOIGAWA。KADODE OOIGAWAは、JA大井川、島田市をはじめ地元4者が連携し、創設された。 お茶関連の事業としては破格の巨大プロジェクトだ。 5年の構想を経て、コロナ禍真っ最中だった2020年11月に開業。オープンより2年半で、来場者数200万人を突破した。 このKADODE OOIGAWAのある島田市は、日本を代表する茶産地。1300haを超える茶畑が広がり、生産されるお茶の大半は、急須で淹れる「深蒸し煎茶」だ。そして施設運営者であるJA大井川の組合員には多数の茶農家がいる。もちろん茶農家にとって深蒸し煎茶が売れるのが一番の理想だ。 しかし年間100万人の来場者にとって、お茶はペットボトルが基本で、急須を持たない家庭も多いのが現実だ。 つまりKADODE OOIGAWAには、日本茶の理想と現実が凝縮されている。この理想と現実のギャップを埋めるため、構想段階から議論が積み重ねられ、ここにはたくさんの工夫が詰まっている。 たとえば、煎茶の奥深さを知ってもらうための「16種の煎茶飲み比べセット〜GREEN TEA MANDARA」や「緑茶B.I.Y.スタンド」、お茶を選べない人のための「緑茶診断」。製茶工程を体験できる『緑茶ツアーズ』、お茶漬け、緑茶バーガー、お茶ラーメンなど、数え切れないほどの工夫が散りばめられている。 年間100万人の来場者とさまざまな理想と現実が交錯するKADODE OOIGAWAを運営する皆さんを代表して、岡本さんと太田さんのお二人にお話を伺った。 岡本正寛(おかもと まさひろ) 大学卒業後、新卒で大井川農業協同組合に入組し、総合事業体を活かした多様な職務を経験。金融・共済事業を中心とした営業、管理業務を行い、その後は、出向経験による地方創生事業に関わる。ここでJA、行政、民間が連携する新プロジェクト「体験型フードパークKADODE OOIGAWA」の開業に携わり、開業から2年6ヶ月で来場者数200万人を突破させる。 太田昂甫(おおた こうすけ) 大学卒業後、お茶の小売店に入社し3年間の経験を積んだ後、実家の茶農家に就農。現在は、緑茶・農業・観光の「体験型フードパークKADODE […]

《茶xCSA》「茶畑オーナー制度」で、お茶を飲む人と共にお茶の木を植え、草を取る。ファンと支えあう茶業の喜び【足久保ティーワークス】

CSAという言葉を聞いたことがあるだろうか? CSAとは、Community Supported Agricultureの略で「地域支援型農業」と訳される。 農業には、天候や病害虫による不作、台風などの災害、資材・燃料の高騰、市場の価格変動といったリスクがあり、通常それらのリスクすべてを農家が負担する。消費者や卸先が、農産物を購入してくれるまでの期間、つまり植える〜育てる〜収穫〜出荷までの半年から一年のあいだ、農家は一円の収入もない。当然のことだ。しかしこの「当然」が、農業の初期投資を上げ、キャッシュフローを悪くし、経営をハイリスクにする。 「当然」、新規就農者が減り、年金がもらえる(定期収入がある)高齢者だけが農業を続けられる現状に行き着く。 CSA(地域支援型農業)は、そういった農家が抱える経営上のリスクを消費者が共有する仕組みだ。1980年代に米国で始まり、欧米などで広がっている。2000年代以降、日本でも取り組み事例が少しずつ増えている。 持続可能な農業の理想形といえる、消費者と生産者が支えあうCSAを「茶畑オーナー制度」という形で、2021年より実践する足久保ティーワークスさんにお話をうかがった。 足久保ティーワークス 「静岡茶はじまりの地」の足久保で活動するお茶が大好きな茶農家集団。 足久保のお茶を未来に繋いでいきたいとの想いから「はじまりの紅茶」をつくりました。 足久保の茶農家だからこそできるこだわりの製法でひとつずつ大切に商品にして届けています。 「お茶の魅力をお客様に直接お伝えする」をモットーに、茶摘み体験や工場見学のイベント、茶畑テラスカフェの運営、全国各地へポップアップストアとして出店しています。 生産者と消費者がお互いに支えあう仕組みづくりに取り組む[足久保ティーワークス] Q:[足久保ティーワークス]が取り組む事業について教えてください。 北條:「自分たちが育てて作り上げたお茶を自分たちで魅力を伝えながら販売していく」ということをモットーに、お茶の生産から販売まで一貫して行っています。茶畑でのお茶の生産から製茶、テラスカフェ「はじまりの紅茶」やイベントの運営、オンラインショップ、さらには「茶畑オーナー制度」も行っています。 運営メンバーとしては、荒茶工場全体の運営に携わっている正組合員が6名、生産農家さんである準組合員が約20名で構成されています。茶園のこだわりやどんなお茶を生産していくかを試行錯誤しています。 Q:[足久保ティーワークス]のメンバーはどんな人たちですか? 北條:地元が大好きな茶農家とお茶が大好きなスタッフたち、モチベーションの高い仲間が集まっています。 足久保ティーワークスの皆さん 足久保の茶農家メンバーがほとんどですが、「お茶が好きで自分たちのお茶を自分で売っていきたい」という志に共感したメンバーが各地から集まってきています。北海道出身のメンバーもいます。 ステータスではなくファン作り。3年続けてきた茶畑オーナー制度の次なる構想とは […]

《茶✕輸出》ハワイと日本の良さをブレンド。世界のトレンドにあったブレンドティーで日本茶を残していく挑戦【 Yunomi.life/Ian Chun】

日本茶2000年以降、世界的な抹茶ブーム等により、お茶の輸出は約30年ぶりに増加に転じた。また国内需要の減少を受け、国策としてもお茶の輸出促進が進められた。 その結果、この20年間でお茶の輸出額は16倍に増え、200億円を超えるまでに増加した。輸出への需要は、玉露をはじめとする高級茶と、加工用抹茶などの食品フレーバー(抹茶風味など)の原料茶に二分される。量と金額が目立つ加工用抹茶が話題になりがちななか、高級茶の輸出に地道に取り組んでいる人達もいる。その一人が、Yunomi.lifeのイアン・チュンさんだ。大学時代から日本文学を学ぶほどの日本好きで、すでに20年以上日本に住みながら、日本茶の輸出に取り組んでいる。 Yunomi.lifeで取り扱う日本茶は、1000種類を超え、300以上の生産者・茶商から直接買い付けている。しかも取り扱うお茶の生産者・茶商の情報をウェブサイト上で公開し、それぞれのお茶の紹介も丁寧に行なっている。そのため海外の日本茶好きから、Yunomi.lifeは高い評価を受けている。現在、量と金額が目立つ原料茶の供給は、アジアを中心とした国々でも生産が増えており、それらは日式茶(ジャパニーズスタイルティー)とも呼ばれている。これからも価格競争力のあるそういった国々の原料茶供給は増加するのは間違いない。日本茶の価値を一言で表現することはできないが、その価値を地道に丁寧に伝えながら、広め続けているYunomi.life。その運営者である株式会社MATCHA LATTE MEDIAの代表イアン・チュンさんに話をうかがった。 Ian Chun(イアン チュン) 株式会社MATCHA LATTE MEDIA代表取締役CEO。ハワイで生まれ育ち、2001年ブラウン大学卒業。2006年上智大学大学院卒業。ブラウン大学時代に日本文学の研究で1999年に留学生として来日し、同大学卒業後、日本に移住。株式会社ワコムにて消費者向け商品のマーケティングと通販事業を担当し、2010年から日本茶業界に挑戦。小規模生産者の海外展開支援事業として会社を設立し、2013年からYunomi.lifeを運営している。 日本茶を届けた国は90カ国! Q:イアンさんが運営する、Yunomi.lifeはどんなサービスですか? イアン:Yunomi.lifeは世界に日本茶の生産者、農家さんを紹介しています。オンラインショップも運営しており、日本茶の輸出事業も行っています。これまでに日本茶を90の国へ届けてきました。 Q:主な輸出国と、それとは逆にちょっと珍しい輸出国はどこですか? イアン:主な輸出先はアメリカです。珍しいところですと、フランス領リユニオン島やマヨット島、イギリスのケイマン諸島やシリー諸島、デンマーク自治領のフェロー諸島などでしょうか。 最近は中東からの問い合わせが多く、個人的にも注目している輸出先です。 Q:輸出先の国によって、反響が違ったりしますか? イアン:基本的にはあまり輸出先の国の反響やその違いに注目はしていません。Yunomi.lifeがターゲットとしているのは「どこの国の人」ではなく、「日本茶が好きな人」。ただ日本と海外の人では「日本茶が好き」の「好き」が少し違うなと感じます。僕が感じる違いは、日本語が読めるかどうか、そして日本食文化に囲まれて育ってきたかどうか、です。 日本を象徴する文化である日本茶を発信させたい。進化させたい。 Q:そんな海外へお茶を輸出しているYunomi.lifeを運営しているイアンさんですが、運営するにあたってのミッションはなんだとお考えですか? イアン:各産地の各種類・各品種のお茶を日本から全世界にお届けすることです。 […]

《茶✕実・油》目指せ!オリーブオイル。全国に広がる放棄茶園は宝(茶の実)の山。茶の実油の普及で放棄茶園は復活する。【日本 茶の実油協会/地藤久美子】

お茶の生産量が減少し、茶畑も減っている。全国の茶園面積は、史上最大の6.1万ha(1983年)から3.7万ha(2022年)へと、この40年で3分の2になった。減少した2.4万haの茶畑は統計上の減少であって、消失したり、茶の木が枯れてしまったわけではない。大半は、生産のために管理されなくなったので、統計から外されただけだ。こういった茶畑は、放棄茶園または荒廃茶園と呼ばれ、そこには樹高2〜3mの茶の木が鬱蒼と茂っている。こういった放棄茶園には、秋になると茶の花が咲き、茶の実がびっしりとなる。そしてお茶はツバキ科の植物で、ツバキ同様にタネから油を絞ることができる。放棄茶園が全国の茶産地に広がっている今、この茶の実油に注目する人たちが増えている。まだまだ少数だが、茶の実油の商品も登場し始めている。そして2016年、日本茶の実油協会も組織され、これまで全国各地で個別に茶の実油に注目し、孤独に情熱を傾け、研究していた人たちが集まりつつある。また、まだまだ少ないながらも茶の実油に関する研究結果もあり、茶の実油にはツバキ油と同等のオレイン酸とリノール酸が含まれることも分かってきた。これから確実に増える放棄茶園とまだまだ発展途上の茶の実油の世界。茶の実油の可能性を日本茶の実油協会代表理事 地藤久美子さんにお話をうかがった。 地藤久美子(じとう くみこ) 茶の実を見つけた時の感動が忘れられずに早8年。全国で茶の実を集めている人と繋がり、協会を運営し、油を使ったバウムクリーム作りのイベントを開催。毎年秋は、ホームグラウンドである滋賀の茶畑が私を呼んでいる!と勇んで畑へ。一度行くと時間を忘れて収穫してしまうほどの茶の実好き。 知られざる「茶の実油」の可能性を探りたい Q:「日本茶の実油協会」について教えてください。 地藤:2017年に活動をスタートした任意団体です。 日本茶の実油協会のみなさま結成のきっかけは2016年6月に東京・高円寺で開催された茶の実油のイベントでした。その会を主催されていた、株式会社緑門の下山田さんにご挨拶をし、「私も茶の実を拾いたいと思っているんです」とお伝えしたところ、「茶の実に興味がある人を何人か知っているから、一度集まりましょうか」という話になったのです。 そして同年秋には15人ほどが集まり、「第1回サミット」と称した、ただの飲み会を開催しました。続いて2017年12月に第2回サミットを名古屋でして、今回は勉強会を開催しました。第3回は2018年11月に滋賀県の信楽で、茶の実を拾ったり茶の実油を絞ったりするイベントを開催しました。 Q:メンバーたちは全国いろいろなところで活動しているんですか? 滋賀県で行われた第3回茶の実油サミット地藤:そうですね。佐賀県、滋賀県、奈良県、京都府……各地にメンバーがいます。 なかには、インドに住んでいたときに茶の実に興味を持ち、帰国後は東京と佐賀を行き来しつつ、嬉野の茶畑で茶の実を拾っているというユニークなメンバーもいます。彼は2023年の秋には300キロほどの茶の実を収穫しました。 Q:茶農家なら誰しも「茶の実を活用できたらいいのに」と考えたことがあるように思います。それなのに、これまで茶の実がビジネスになってこなかったのはなぜでしょうか。その背景にどのような難しさがあるのか、お聞かせください。 地藤:やはり茶の実油の搾油率が10%とかなり低いことでしょうか。先述したメンバーの例でいうと、茶の実を300キロ収穫しても、乾かすと150キロになり、茶の実油にするとわずか15キロになってしまいます。効率がよくないので、やはりみなさんなかなか手を出せませんよね。 それと、収穫タイミングの問題もあります。一番いいのは、茶の実が熟して、割れそうになっているタイミング。実が割れそうになってから落ちるまで1週間ほどあるので、その間に枝を落として収穫するのが効率的です。 拾った茶の実たちいったん実が落ちてしまうと、地面を這いつくばって実を探すしかなく、手間がかかります。私は地面に落ちている実を探すのが、宝探しのようで好きなんですけどね。毎年、収穫の時期になると、毎日のように茶畑に通って2キロ程度ずつ収穫します。茶の実油にするとわずか100グラム程度に減ってしまう量ですが、収穫が楽しいからそれでいいんです。 また、茶の実油を取り扱う難しさで言うと、利用方法がまだ確立されておらず、商品が生まれないため、消費者がその存在を知らないことでしょう。需要が少ない分、商品化しても割高になってしまう。そこが問題だと思います。 これから研究が進んで、茶の実油の特徴や強みが見つかることを期待したいです。 茶の実を拾うのが楽しくて楽しくて、このために生まれてきたのかも? Q:茶の実油に出会ったきっかけを教えてください。 地藤:8年ほど前のこと、信楽でお茶専門店に勤めていた時、べにふうきの茶畑に見慣れないものが落ちていました。それを持ち帰って、社長に「これ、なんですか?」と聞いたら「茶の実だよ、知らないの?」と言われまして。 […]