京の七夕の楽しみ方

七夕といえば、笹に短冊を飾る風景を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。 神社や商店街はもちろん、学校や地域の施設など、身近な場所でも七夕の飾りつけを見ることができます。 多くの小学校では、子どもたちが思い思いの願いごとを短冊に書き、星をテーマにした工作を作ったりと、楽しい行事のひとつになっています。 給食にも「七夕ゼリー」など、星形のカラフルなデザートが登場し、季節感をたっぷり感じられる工夫がいっぱいです。 七夕は7月だけじゃない? 一般的に七夕は7月7日に祝われますが、京都や一部の地域では、旧暦にあたる8月にも七夕行事が行われます。 実は私も、九州にいた頃はそんな風習があることをまったく知りませんでした。京都に住むようになってから、夏の間に2回も七夕を楽しめることを知り、ちょっと得した気分になったのを覚えています。 美しすぎる「七夕スイーツ」 京都の七夕を語るうえで欠かせないのが、季節限定の和菓子たち。 中でも「七夕羊羹(たなばたようかん)」は、見た目も味も格別です。天の川をイメージした美しい層や、星形のモチーフをあしらった羊羹は、目にも涼やかで、まさに食べる芸術品のよう。 7月と8月の七夕シーズンには、京都各地で茶会や茶道のお席が開かれ、こうした七夕限定の和菓子が抹茶とともに振る舞われます。 星に願いを、心にひとやすみを もし7月や8月に京都を訪れることがあれば、ぜひ七夕ならではの和菓子や、趣のある茶会をのぞいてみてください。 美しく丁寧に作られた季節の味わいとともに、静かに喫する時間は、忙しい日常にそっと彩りを添えてくれるはずです。 …そういえば、織姫と彦星も、愛と仕事のバランスを取るのに苦労していたようです。 あなたも、仕事や育児に少し頑張りすぎていませんか? 自分時間はとれていますか? 今だけのお菓子を口実に、たまにはお茶と甘味で、心にちょっとした「七夕の休憩時間」をつくってみてはいかがでしょう。  

「水無月(みなづき)」に込められた京都の夏の味わい

「水無月(みなづき)」という言葉は6月の月名ですが、梅雨の真っ只中なのになぜ「水の無い月」というのか、考えたことはありますか? これは、古語の文法に由来しています。「無」は否定ではなく、「の」にあたる助詞として使われていたため、「水無月」は本来「水の月」という意味なんです。 とはいえ、雨が多い季節に「水が無い月」と書かれているのは、少し不思議に感じますよね。 京都で「水無月」と言えば、もうひとつ特別な意味があります。 京都で育った方にとっては、6月になると自然と頭に浮かぶ、ある和菓子の名前でもあるんです。とくに、6月30日に欠かせない甘味として親しまれています。 私は九州出身で、京都に来るまでこの「水無月」というお菓子の存在を知りませんでした。 でも、こちらではすっかり初夏の風物詩。ういろう生地を三角形に切り、上に甘く煮た小豆をのせた、涼しげでやさしい味わいの和菓子です。もっちりした食感と透明感のある見た目が、蒸し暑い季節にぴったりなんですよ。 実はこのお菓子、もともとは「氷」の代わりとして作られたものだそうです。 昔は「氷室(ひむろ)」という貯蔵庫に冬の間にできた氷を保存し、6月30日に宮中へ献上する「氷の節句」という行事がありました。ただし、冷蔵庫などがなかった時代、庶民が氷を口にするのはなかなか難しいこと。 そこで氷のかけらを模したこの和菓子が生まれたのです。三角形は氷片を、小豆は厄除けの力があるとされ、無病息災を願う意味が込められています。 また、同じ6月30日には「夏越の祓(なごしのはらえ)」という神道の行事も各地の神社で行われます。 茅(ちがや)で作られた大きな輪を、和歌を唱えながら左回り、右回り、左回りと八の字を書くように3度くぐります。半年分の穢れを祓い、残りの半年の健康と幸せを祈る儀式です。この日に水無月をいただくことで、さらに厄を落とし、元気に夏を乗り切れると信じられています。 京都の和菓子店では、水無月を6月30日だけ限定で販売するところもあり、当日は朝から行列ができることも。 毎年「どのお店の水無月にしようかな」と楽しみにしている方も多いんです。 茶道のお席でも、6月にはこの水無月がよく登場します。ほんのり甘く、さっぱりとした口当たりが、点てたばかりの抹茶によく合います。 もし6月に京都を訪れる機会があれば、ぜひ「水無月」を探してみてください。静かにお茶とともに味わいながら、日本の夏の美しい伝統を感じてみてはいかがでしょうか。