日本茶の香気ワークショップ in パリ(フランス)

パリでは、お茶の香りの学校「ラ・カンテサンス」にて、日本茶と香りのワークショップを開催しました。この日も日本から同行してくれている、静岡島田の茶農家じゅんじゅんことであい農園の渡邊潤さんも一緒でした。

ラ・カンテサンスは、元調香師のカリーネさんが、2016年に立ち上げた、お茶の香りに特化した学校です。

昨年からパリ8区にあるマドレーヌ寺院の近くに施設を構え、毎年着々と進化しています。

ラ・カンテサンスの特徴は、お茶の香りに含まれる様々な成分を嗅ぎ分け、その香りを誰にでも分かりやすい香り(例えば、バニラ、カラメル、アニス、レモンなど)として表現し、認識してゆくところです。

一方、日本茶の鑑定や審査の場合、火香、ミル芽臭、萎凋香、新鮮香、硬葉臭(こわばしゅう)、覆い香など、一般的には馴染みのない言葉で表現されるのが一般的です。

そのため、日本茶の香りを一般の方に伝えるのがなかなかに難しいのが実情で、特に海外の方にこれらの用語で伝えるのはほぼ不可能です。

そこで国際日本茶協会では、ラ・カンテサンスと協力し、日本茶の香りを一般的な香りで表現できるようなセンサリーキットやセミナープログラムを開発する予定です。

これらを使って、それぞれのお茶の香りの違いを一般的な香りで表現し、日本茶の魅力を香りでも広めてゆければと考えています。

そしてこの日のワークショップでは、そのプログラムを作り上げるためのステップとして開催しました。

この日用意したお茶は、ほうじ茶3種、煎茶4種、玉露3種(かぶせ茶含む)の合計10種類。

また用意した香りの成分は、上記の他にヒノキ、ブルーベリー、ローストナッツ、調理したエビ、ヨウ素など13種類。

この10種類のお茶を飲み比べ、そこに含まれる特徴的な香りの成分13種類を嗅ぎ比べました。

この香りのワークショップの面白いところは、香りを認識するのには、3つの種類があることを理解でいることです。

一つ目は、自分の記憶に鮮明にある香りの場合(例えばバニラ)、即座に「あ、バニラだ!」と認識できます。

二つ目は、嗅いだことがあるけど、なんだっけなー?という香りの場合、言われてみると「その香り!」と認識できます。

三つ目が、初めは何も香りがしない気がするのに、香りの種類を教えてもらって、もう一度嗅いでみると、「あ、確かにその香りがする!」と認識できます。

かなり無理矢理の例えですが、これは、他の言語(例えば英語)のリスニングに似ていて、知っている単語(匂い)(例えばapple)の場合は、即座に「アップル」と認識できるけれど、知ってる単語(例えばpear)でも、自分の覚えてる発音(匂い)と少し違ってたりして、あとで「今ペアーって言ったよ。」と教えてもらったら、「あ、たしかに梨だー!」と分かるのに似てます。

そして知らない単語(匂い)(例えばpersimmon:柿)の場合は、「persimmonが柿なんだよ。」って感じで、教えてもらって、「これが柿かー。今度からわかる気がする。」と言う感じです。

日本国内でもお茶の香りをもっと一般的な表現にしようという流れが起こりつつあるので、そこにラ・カンテサンスも合流してもらうと、面白いのではないかと思っております。

この日の実験的な日本茶の香気のワークショップに参加してくれた皆様、そして4時間以上にわたって熱心に教授してくれたカリーネさん、本当にありがとうございました。